Label: NEUREC
LAFMS文化をディープに伝え続ける伝道師"T・坂口"氏のレーベルNEURECより、植田珠来氏による妖怪ノイズ・プロジェクト"ばねとりこ"[堰の傍]が新装版で再登場!!外箱付きの豪華装丁!!
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11年にわたりロサンジェルスで活動し、昨秋より日本に活動の拠点を移した植田珠来さんの妖怪ノイズ・プロジェクト『ばねとりこ』。一つの演奏を行うに際し一体の妖怪を主題とするというスタイルをとっている。さながら、一つの演奏に際しその音源となる物体あるいは現象を一つに限定するスタイルを持っていたAUBEのようだ。
『堰の傍』は2014年にロサンジェルスでのライヴ演奏「否哉」が起点となり制作されたミニ・アルバムである。否哉は爺の顔をしてはいるが後ろ姿が妙齢の綺麗な女性のようであり、思わず声をかけた男性に振り向き脅かせるという妖怪だ。しかし、CD-Rのジャケットに引用した鳥山石燕先生の『今昔百鬼拾遺』に収録された画では、さながら水面に映った自身の顔を嘆いている女性のようにも見える。その瞬間否哉という妖怪が誕生した、と見做すことが出来るかも知れない。
否哉の顔を映した水は堰 (水門) から流れて来たものだ。ならば、鏡となる水面を創り出し妖怪・否哉を出現させたのは水門を開けた者と言う次第となる。そこで、水門の開閉を司る妖怪・赤舌が否哉の発生に関与しているのではないかと妄想し、植田さんに相談し「赤舌」を録音して頂いたのである。赤舌が水門を開きそれによって否哉が生まれる現象は何れも水門近くで起こった筈なので、アルバムの題が『堰の傍』となった。
ばねとりこの自作楽器「バネテック」による初期Organumのような金属音、ドライアイスや電子楽器を駆使したドローンが相まって創生される妖怪ノイズは素晴らしいものだ。2017年に出版され、Discogsで高評価を得ており、入手を希望する方々が少なからず居られる事態を鑑み、現在NEURECの装丁スタイルである外装箱を合わせた新装版として再発することとなった。CD-Rとそのジャケットは2017年出版のものと同じであり、外装箱が付いているだけである。
文:坂口卓也 / NEUREC